放射性物質 クリプトン-85
クリプトン-85の半減期
クリプトン-85の半減期は10.76年
クリプトン-85の崩壊方式
クリプトン-85は、ベータ線を放出して、ルビジウム-85(85Rb)となる。小さな比率でガンマ線が放出される。
クリプトン-85の生成と存在
クリプトン-85は、人工的につくられる放射能。天然では、宇宙線と大気中のクリプトンの反応で生じるが、その量は少ない。クリプトン-85の存在量の測定を試みた1940年代後半には、アメリカの核兵器製造のための再処理がおこなわれたために、大気が汚染されていた。その時の測定値に基づいて空気1m3あたり0.001ベクレル以下と推定されている。人工的には、核分裂による生成が重要である。1メガトン(TNT換算)の核兵器の爆発で400兆ベクレル(4.0×1014Bq)のクリプトン-85が生成する。電気出力100万kWの軽水炉を1年間運転すると、1.5京ベクレル(1.5×1016Bq)が生成する。現在の大気中濃度は、「核の時代」以前の1,000倍以上の1m3あたり1ベクレル以上になっている。大気圏内核兵器実験と再処理工場からの放出が汚染の原因であるが、最近は発電炉の使用済み燃料の再処理の寄与がほとんどすべてである。
クリプトン-85の化学的、生物学的性質
クリプトンは希ガスの一つで、他の物質と反応しない。また、クリプトン-85は体内に蓄積されることはない。
クリプトン-85の生体に対する影響
クリプトン-85から放出されるベータ線は水中で3mmまで届く。被曝は皮膚表面の外部被曝に限られる。クリプトン-85を吸入による体内の被曝線量は、体外の空気中にあるものによる線量より低い。近年の大気内濃度である1m3あたり1ベクレルの場所に1年間居た時の皮膚に対する線量はほぼ0.0004ミリシーベルトになる。
クリプトン-85の再処理工場からの放出
使用済核燃料を再処理すると、核燃料中に含まれる全量が大気中に放出される。六ヶ所村では、年間800tの使用済み核燃料を処理し、33京ベクレル(3.3×1017Bq)のクリプトン-85を大気中に放出する予定である。排気は高さ150mの排気塔から放出される。気象条件によっては、施設の近くだけでなく、遠く離れた青森、弘前、八戸のような都市にも多量のクリプトン-85で汚染された空気が到達する恐れがある。
クリプトン-85の放射能の測定
クリプトン-85の測定は1m3の空気を採取し、冷却して1ccのクリプトンを回収して、ベータ線を気体計数管で測定すれば、大気中濃度が得られるよい。大気中濃度が高い場合は、ガンマ線の測定も地用できる。
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