放射性物質 ヨウ素-131
ヨウ素-131の半減期
ヨウ素-131の半減期は 8.04日
ヨウ素-131の崩壊方式
ヨウ素-131は、ベータ線を放出して、キセノン-131(131Xe)となる。ガンマ線が放出される。
ヨウ素-131の生成と存在
ヨウ素のもっともよく知られている放射性同位体。天然では、大気中で宇宙線とキセノンの反応によって生成し、地上でウラン‐238(238U)の自発核分裂によって生じる。いずれにしてもその量は小さい。人工的には、核分裂で大量に生成する。1メガトン(TNT換算)の核兵器が爆発すると、460京ベクレル(4.6×1018Bq)が生じる。電気出力100万kWの軽水炉を1ヶ月以上運転すると、310京ベクレル(3.1×1018Bq)が蓄積して、その後は同じ量が存在し続ける。
ヨウ素-131の化学的、生物学的性質
「ヨウ素-129」を参照。
ヨウ素-131の生体に対する影響
ガンマ線は放出されるが、ベータ線による甲状腺被曝が大きな問題となる。10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.22ミリシーベルトになる。ガンマ線による被曝は甲状腺以外におよぶが、その線量は小さい。外部被曝も考えておきたい。1mの距離に100万ベクレルの小さな線源があると、ガンマ線によって1日に0.0014ミリシーベルトの被曝を受ける。
ヨウ素-131の原子炉事故の際の放出
原子炉事故が起これば、大量の放射性ヨウ素が放出されると予想されていた。代表的な事故の一つが、1957年10月にイギリスのウインズケール(現、セラフィールド)のプルトニウム生産炉で起こった事故である。700兆ベクレル(7.0×1014Bq)のヨウ素-131などが施設外に放出され、周辺地域で生産された大量の牛乳が廃棄された。この事故をはるかに上回るのが、1986年4月26日に起こった旧ソ連(現、ウクライナ)のチェルノブイリ原発の暴走事故である。この事故では、30京ベクレル(3.0×1017Bq)が放出された。その影響は大きかったが、顕著なものとして甲状腺がんの多発がある。事故の影響を小さくみようとする専門家も居たが、そのような人たちもこの事実は認めざるを得なかった。
ヨウ素-131の体内被曝までの経過
人がヨウ素を吸収する主な経路は、牧草→牛→牛乳→人の食物連鎖である。この移行はすみやかに進み、牛乳中の放射性ヨウ素濃度は牧草上に沈積した3日後にピークに達する。牧草から除去される有効半減期は約5日である。牧草地1m2にヨウ素-131が1,000ベクレル沈積すれば、牛乳1リットルに900ベクレルが含まれると推定されている。チェルノブイリ事故では、放出量が大きかったために、飲料水、空気などを通る経路も考える必要があった。
ヨウ素-131の再処理工場からの放出
六ヶ所村で処理する核燃料の中には、原子炉の運転中に生成したヨウ素-131はすべて崩壊しているが、核燃料中で起こるプルトニウム-240の自発核分裂などで少量が存在している。ヨウ素-129と同様に外部に放出されるが、半減期が短いために被曝線量は小さい。
ヨウ素-131の放射能の測定
ヨウ素-131の測定は、ガンマ線測定によって量を求めるのが、ふつうの方法である。試料を適当な容器に入れ、ゲルマニウム半導体検出器で測定すればよい。検出感度を上げるには、試料を分解してヨウ素を分離し、小さな試料として測定することもある。体内にあるものは全身カウンターで測定できる。
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