放射性物質 鉛-210
鉛-210の半減期
22.3年
鉛-210の崩壊方式
鉛-210は、ベータ線を放出して、ビスマス-210(210Bi、5.01日)になる。低エネルギーのガンマ線が放出される。ビスマス-210もベータ崩壊してポロニウム-210(210Po)に変わる。ポロニウム-210はアルファ線を放出して鉛-206(206Pb)となる。鉛-210があれば、ポロニウム-210もある。
鉛-210の存在と生成
鉛-210は、天然に存在する放射能で、ウラン-238(238U、44.8億年)の崩壊で生じる放射能の一つ。鉱石中のウラン1tに4.3㎎(放射能強度120億ベクレル、1.2×1010Bq)が含まれる。ウラン鉱が精錬される時には、大部分が鉱砕などに入り、一部は環境中に放出される。土壌中の分布はウランと似ているが、鉛の挙動はより複雑である。ウラン-238の崩壊生成物であるラドン-222(222Rn、3.824日)は希ガスであり、土壌などから大気中に放出される。その崩壊によって生じる鉛-210の大気中濃度は、0.2~1.5ミリベクレル/m3の範囲にある。ラジウム‐226(226Ra、1,600年)の1g(360億ベクレル、3.6×1010Bq)を10年置くと、96億ベクレル、9.6×109Bq)の鉛-210が生じる。純粋なものを得るには、古いラジウム‐226からの分離が利用される。人工的につくることは難しい。10億ベクレル(1.0×109Bq)以下のポロニウム-210を得るには、鉛-210から分離すればよい。
鉛-210の化学的、生物学的性質
鉛は骨の中のカルシウムと置き換わることができるので、全身の骨の中に分布する。成人の体内にある元素の量は120㎎で、約90%が骨格に、残りは腎臓などに入る。1日に摂取する元素の量は0.44㎎、鉛-210の放射能強度は0.11ベクレルとされている。
鉛-210の生体に対する影響
鉛-210・ビスマス-210から放出されるベータ線とポロニウム-210から放出されるアルファ線による内部被曝が問題になる。10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は6.8ミリシーベルトになる。自然界に存在する鉛-210と崩壊生成物による年間被曝線量は、骨髄で0.14ミリシーベルト、骨表面で0.7ミリシーベルトとされている。骨格に入ったものは60%が1ヶ月以内、20%が1年以内に排泄され、残りの20%は長い間そこに残るとされている。
鉛-210の放射線の測定
鉛-210の放射線の測定は、水試料では、鉛を分離して、その中で10日以上経過後に生まれてくるビスマス-210を分離し、ベータ線を測定すればよい。他の試料では、化学処理によって有機物を分解して溶液にした後に、同様の操作をおこなう。放射線測定には液体シンシレーション計数装置または低いバックグラウンドのガイガー計数装置を用いる。ガンマ線測定によってもよいが、感度がベータ線測定の場合の5%以下になる。体内にある量を知るには、排泄物中の放射能を測るバイオアッセイを用いる。
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