放射性物質 トリウム-232
トリウム-232の半減期
放射性物質/トリウム-232の半減期は、141億年
トリウム-232の崩壊方式
トリウム-232は、アルファ線を放出してラジウム-228(228Ra、5.75年)となる。小さな比率でガンマ線が放出される。ラジウム-228は崩壊してトリウム-228(228Th、1.91年)となり、トリウム-228の崩壊によって、鉛-212(212Pb、10.6時間)、ビスマス-212(212Bi、1.01時間)などの短寿命放射能が生じ、最後は鉛-208(208Pb)になる。トリウム-232の崩壊生成物にラジウム-228より長寿命のものはない。トリウムがあれば、すべての崩壊生成物が存在するとしてよい。
トリウム-232の存在と生成
トリウム-232は、代表的な天然放射能で、太陽系がつくられた時から存在する。地殻に多く含まれ、玄武岩、花こう岩および石灰岩1kgに含まれるトリウムの重量は、それぞれ1.6、23および1.7mgである(玄武岩1kg中の放射能強度は6.5ベクレルに相当する)。土壌1kgに含まれるトリウムの重量は1~35mgの範囲にある。海水中のトリウム-232濃度は非常に低く、1リットルに0.000001mg程度しか含まれていない。
トリウム-232の化学的、生物学的性質
トリウム-232は水酸化物と酸化物は水に溶けない。水酸化物は酸に溶けるが、酸化物は溶けにくい。硝酸塩、硫酸塩と塩化物は水に溶けるが、溶液を塩基性にすると不溶性の沈殿が生じる。体内のトリウム-232の量は少なく、0.1mg以下と推定されている。
トリウム-232の生体に対する影響
トリウム-232による内部被曝の影響は大きい。10,000ベクレル(トリウム量、2.5g)の酸化物・水酸化物を吸入した時の実効線量は120ミリシーベルト、経口摂取では0.92ミリシーベルトになる。吸入した時の影響の大きさに注目すべきである。外部被曝線量も小さくない。酸化物1kgを入れた試薬ビンから1mの距離での年間線量は5ミリシーベルトになることもある。
トリウムを含む鉱物、モナザイト
モナザイト(モナズ石ともいう)は希土類元素のリン酸塩鉱物で、トリウム含有量は10%に達する。モナザイトの存在によって被曝線量の高い場所が、ブラジル、インドおよび中国にある。そこでは、年間線量が20ミリシーベルトを超えることもある。「家庭でラドン温泉を」などの宣伝を見かけるが、このような商品にはモナザイトが入っていることが多いが、そのようなものはまったく無意味である。
トリウム-232の核原料物質、トリウム
トリウム-232の中性子捕獲で生じるトリウム-233(233Th、22.5分)が崩壊を続けてウラン-233(233U、15.9万年)となる。遅い中性子の照射で核分裂を起こすウラン-233を核燃料とする原子炉がつくれるはずであるが、技術的な問題点も多く、その方向への技術開発は進んでいない。
トリウム-232の放射能の測定
トリウムの重量を決定すればトリウム‐232の量がわかる。化学分析の技術が適用できるが、放射能測定も役立つ。土壌などの試料から放出されるガンマ線をゲルマニウム半導体検出器で測定するのがふつうの方法である。体内に入っている量を知るには、全身カウンターで測定する。
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