放射性物質 ネプツニウム-237
ネプツニウム-237の半減期
214万年
ネプツニウム-237の崩壊方式
アルファ線を放出して、プロトアクチニウム-233(233Pa、27.0日)となる。低エネルギーのガンマ線が放出される。プロトアクチニウム-233の崩壊でウラン-233(233U、24.5万年)が生じ、崩壊が続いて最後はビスマス-209(209Bi)となる。
ネプツニウム-237の存在と生成
人工的につくられる放射能。ウラン-235(235U、7.04億年)の二重中性子捕獲またはウラン-238(238U、44.8億年)の速中性子照射で生成するウラン-237(237U、6.75日)がベータ崩壊して生じる。また、プルトニウム-239(239Pu、2.41万年)の二重中性子捕獲で生成するプルトニウム-241(241Pu、14.4年)の崩壊で生じるアメリシウム-241(241Am、433年)が崩壊しても生成する。 核兵器の爆発によって生成するが、爆弾の種類により生成量は異なり、核兵器実験によって大気中に入った量はよくわかっていない。電気出力100万kWの軽水炉を1年間運転後の使用済核燃料1tに約0.25kg(放射能強度、65億ベクレル、6.5×109Bq)が含まれるが、その核燃料の中にあるプルトニウム-239の3kg(放射能強度、6.9兆ベクレル、6.9×1012Bq)より少ない。
「ビキニ水爆実験」とネプツニウム-237
1954年3月1日にビキニ環礁で強行された水爆実験で大気中に放出された「死の灰」の中に大量のウラン-237が含まれていた。重水素とトリチウムの核融合で発生した速中性子とウランの反応でウラン-237が生成し、崩壊してネプツニウム-237が生じていた。
ネプツニウム-237の化学的、生物学的性質
ウランと似た化学的性質をもつ。金属は空気中で表面が酸化されやすい。塩酸には溶けないが、硝酸に溶ける。4価の化合物が重要で、酸化物は二酸化ネプツニウム(NpO2)が安定である。溶液中でもふつうは4価イオンとして存在し,塩基性では不溶性の水酸化物を生じる。体内に取り込まれたときの生物学的:半減期は、骨で50年、肝臓で20年、生殖腺では非常に長いとされている。
ネプツニウム-237の生体に対する影響
プロトアクチニウム-233がガンマ線を放出するが、アルファ線による内部被曝の方が問題になる。10,000ベクレルの不溶性酸化物を吸入した時の実効線量は150ミリシーベルト、経口摂取した時は1.1ミリシーベルトになる。ただ、ネプツニウムの生体影響の知識はなお不十分で、上の線量も暫定値と考えてよい。
ネプツニウム-237の放射能の測定
化学的に分離した測定試料のアルファ線を測定すればよいが、放射能強度が低いために感度は低い。ICP質量分析による測定の方が感度は高い。いずれにしても微弱な放射能を含む環境試料の分析操作は煩雑である。体内にある量を知るには、排泄物中の放射能を測るバイオアッセイを用いる。
|
|
|