プルトニウム-239
プルトニウム-239の半減期
2.41万年
プルトニウム-239の半減期崩壊方式
アルファ線を放出して、ウラン-235(235U、7.04億年)となる。
プルトニウム-239の半減期生成と存在
天然では、ウラン鉱石中にごく微量が存在するが、問題になる量ではない。地球上にあるものはすべて人工放射能とみてよい。人工的には、ウランの中性子照射でつくられる。ウラン-238(238U)の中性子捕獲で生じるウラン-239(239U、23.5分)がベータ崩壊してネプツニウム-239(239Np、2.36日)が生まれ、その崩壊で生成する。核兵器の材料と原子炉燃料として用いられる核物質である。
原子炉運転とプルトニウムの生成
原子炉を運転すると、プルトニウム-239が生成し、核分裂するとともに中性子を捕獲してプルトニウム-240(240Pu、6,560年)などが生じる。したがって、原子炉内に蓄積するルトニウムは、いくつかの同位体の混合物である。2年間運転後の軽水炉内にあるプルトニウムの同位体組成の一例を表1に示す。
核兵器開発とプルトニウム
プルトニウムは核兵器の製造にもっとも適当な核物質である。ただ、プルトニウム-240の自発核分裂にによって中性子が発生するために核物質のほんの一部しか爆発しない恐れがあり、プルトニウム-239の比率が90%以上の「核兵器級プルトニウム」の製造が求められる。そのために、黒鉛減速型原子炉を用い、ウランの照射時間を半年以下にするようにしている。爆弾の構造も高濃縮ウランを用いるものとは異なる。1945年8月9日に長崎に投下された原子爆弾にはプルトニウムが用いられた。その後に、大気圏内で核兵器の爆発が繰り返えさわれ、爆発しなかったプルトニウムが大気中に撒き散らされ、広く地上に降下した。降下量の正確な値はわからないが、約5tに達すると推定されている。
プルトニウム-239の半減期化化学的、生物学的性質
プルトニウムの化学的性質を簡単に述べることは難しい。金属は表面が酸化されやすく、時には発火する。不活性な気体の中で処理せねばならない。代表的な化合物に4価の化合物が多く、二酸化プルトニウム(PuO2)は高温にも耐え、核燃料に用いられる。水酸化物、酸化物などは水に溶けにくいことが多いが、溶解度は酸性度、有機物の存在などの化学的条件によって化学的挙動は大きく異なる。体内に取り込まれた時の生物学的:半減期は、骨で50年、肝臓,でも20年、生殖腺ではさらに長いと考えられている。
プルトニウム-239の半減期生体への影響
アルファ線による内部被曝が問題になる。10,000ベクレルの不溶性酸化物を吸入した時の実効線量は83ミリシーベルト、経口摂取した時は0.090ミリシーベルトになる。その差は大きいが、原因の一つは経口摂取した時は体内に吸収されにくく、吸入した時は肺などに長く留まることにある。
高速増殖炉とプルトニウム
消費した核燃料より生成する核燃料が多くできる原子炉を「増殖炉」とよぶ。この条件にかなう例はプルトニウム-239の高速中性子照射のみである。高速中性子を用いる増殖炉を「高速増殖炉」という。実際は,能率のよい増殖は不可能で,核燃料の「倍増時間(ある原子炉から得られた核燃料が,同型の原子炉1基に装荷される核燃料の量に達するまでの時間)」が100年に達するとの試算さえある。要するに、すみやかに核燃料を増やすことはできない。 開発中の原子炉は,溶融金属ナトリウム(融点97.8゚C)を冷却材とする溶融金属高速増殖炉である。技術的に多くの難点をかかえるこの増殖炉であるが、水と反応して爆発しやすい水素を発生し、溶融状態では空気中で燃えるナトリウムを用いねばならないことだけを取ってもその実現は困難だといえる。 増殖炉開発の歴史は古いが、精力的に開発を進めてきたフランスを含む多くの国は開発を中止している。日本では、1995年12月8日に、原型炉「もんじゅ」の二次冷却系で溶融ナトリウムの漏洩があって、開発は中断している。最近の運転再開の動きは、将来を熟慮した上での対応ではない。
「プルサーマル」とは
プルサーマルは、妙な造語である。「プル」はプルトニウム、「サーマル」は熱の意味である。プルトニウムを遅い中性子(熱中性子)を用いる原子炉(ここでは軽水炉)の燃料にすることである。「リサイクル」できる量はわずかであり、決して有効な方法ではない。電気事業連合会は宣伝に努めているが、各電力会社が導入に熱心なようには思えない。
プルトニウム-239の半減期放射能の測定
測定試料が放出するアルファ線をシリコン半導体検出器で測定するのが適当であるが、プルトニウム-239とプルトニウム-240を区別して測定できない。この二つを区別するには、ICP質量分析法によって原子を測定する。体内にある量を知るには、排泄物中の放射能を測るバイオアッセイを用いる。
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