放射性物質 炭素-14
炭素-14半減期
炭素の5,730年
炭素-14崩壊方式
炭素-14は、低エネルギーのベータ線を放出して、窒素-14(14N)となる。
炭素-14生成と存在
炭素-14の長寿命放射性同位体。天然に存在する代表的な人工放射能で、大気中で窒素と宇宙線起源の中性子の反応によって生じる。地球上の存在量は1,500京ベクレル(1.5×1019Bq)と推定されている。大気中の主な炭素化合物は二酸化炭素である。核兵器実験以前の大気中の二酸化炭素に入っている炭素1gあたり0.23ベクレルが含まれていた。産業革命以後、炭素-14を含まない化石燃料を燃焼するようになり、炭素-14の比率はわずかに下がってきた。20世紀以降の大気中二酸化炭素では、炭素-14の比率が1%ほど低くなっていたが、核兵器実験の影響ははるかに大きかった。人工的にも、窒素と中性子の反応でつくられる。1954年3月1日にビキニ環礁で実施された水爆実験では、1京ベクレル(1.0×1016Bq)以上が大気中で生成した。大気圏内核兵器実験の影響で1960年代半ばの大気中二酸化炭素では炭素中の炭素-14の比率が核実験以前の約2倍(炭素1gあたり0.45ベクレル)に達していたが、現在は核兵器実験以前の値に近いところまで下がっている。原子炉の中では、核分裂では生成せず、炭素・窒素・酸素などと中性子の反応によって生じる。その量は大大きくないと推定されている。
炭素-14炭素年代決定法
古文化財の中では、炭素-14の比率が時の経過とともに減少する。この事実を利用して30,000年以上前までの資料の年代が決定できる。この方法の考古学・歴史学への貢献は大きかった。
炭素-14化学的、生物学的性質
炭素は、さまざまな化合物として天然に存在し、食品の中にもたんぱく質、炭水化物、脂肪などの多くの形で入っている。炭素の代謝は摂取する化合物によって変わる。炭素は全身に広く分布し、ふつうは特定の器官に濃縮されない。成人の体内にある炭素の量は16㎏、炭素の1日の摂取量は0.3㎏である。生物学的半減期は約40日とされている。
炭素-14生体に対する影響
炭素-14から放出されるベータ線は水中で0.3㎜までしか届かない。内部被曝が問題になる。10,000ベクレルの炭素-14を含む有機物を経口摂取した時の実効線量は0.0058ミリシーベルト、10,000ベクレルを含む二酸化炭素を吸入した時の実効線量は0.000065ミリシーベルトになる。二つの間には約100倍の差がある。天然に存在する炭素-14による年間被曝線量は組織などによって異なり、骨格組織で0.024ミリシーベルト、生殖腺組織では0.05ミリシーベルトになる。
炭素-14再処理工場からの放出
六ヶ所村では、年間800tの使用済核燃料を処理し、排気中への放出量を52兆ベクレル(5.2×1013Bq)としている。排水中に放出される量は予測しがたい。放出される放射能の量は大きくないが、施設の近くで栽培されている農作物に含まれる炭素中の炭素-14の比率が高くなる恐れがある。
炭素-14放射能の測定
以前は、炭素を含む試料を処理して0.1g以上の炭素を含む測定試料をつくり、液体シンチレーション計数装置または気体計数管でベータ線を測定していた。現在は、小型加速器を用いる加速器質量分析法の利用が主流である。この測定法では、0.01g以下の炭素で測定できる。
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