放射性物質/ポロニウム-210
ポロニウム-210の半減期
ポロニウム-210の半減期は138日
ポロニウム-210の崩壊方式
ポロニウム-210はアルファ線を放出して、鉛-206(206Pb)となる。ポロニウム-210からは小さな比率でガンマ線が放出される。
ポロニウム-210の存在と生成
ウラン-238(238U、44.8億年)が崩壊を続けた後に生じる。鉛-210(210Pb、22.3年)があれば、ある程度の量のポロニウム-210もある。ポロニウム-210は鉱石中のウラン1tに0.074㎎(放射能強度120億ベクレル、1.2×1010Bq)が含まれる。ウラン鉱の精錬時には、大部分が鉱砕などに入り、一部は環境中に放出される。ウラン-238の崩壊生成物である気体のラドン-222(222Rn、3.824日)は大気中に放出され、崩壊によって生じるポロニウム-210も大気中に存在する。その年間平均大気中濃度は0.2~1.5ミリベクレル/m3の範囲にある。人工的には、ビスマスの原子炉照射でつくられる。ビスマス-209(209Bi、同位体存在比100%)が中性子を捕獲して生じるビスマス-210(210Bi、5.01日)がベータ崩壊してポロニウム-210となる。1㎏のビスマスを原子炉で1ヶ月照射すれば、3,000億ベクレル(3.0×1011Bq)が得られる。ビスマス板(厚さ0.1㎜)をサイクロトロンで加速した1,000万電子ボルトの重陽子で10日間照射すると、400億ベクレル(4.0×1010Bq)をつくることができる。
ポロニウム-210の化学的、生物学的性質
ポロニウムについては、0.1㎎以下の微量を用いて性質を調べている。化学的挙動は複雑であって、予測しにくい。ふつうは水に溶ける形を取り扱っている。ポロニウム-210が取り込まれやすい主な器官は肝臓、腎臓および脾臓である。体内の総量は約40ベクレルで、1日の摂取量は約0.1ベクレルである。ポロニウム-210が体内に取り込まれた後には、大部分は約100日で排泄されるとしている。
ポロニウム-210の生体に対する影響
ポロニウム-210から放出されるアルファ線は水中で0.04㎜までしか届かず、体内摂取による内部被曝が問題になる。10,000ベクレルを吸入した時の実効線量は22ミリシーベルト、経口摂取した時は2.4ミリシーベルトになる。2006年秋にロシアのリトビネンコ氏の死亡についてのポロニウム‐210の投与が問題になった。人を死に至らしめるには、少なくとも1億ベクレル(1.0×108Bq)が必要だと、私は考えている。このような大量を入手できるのは、国家機関に関係する者しか居ないであろう。
ポロニウム-210の放射線の測定
ポロニウム-210の放射線測定は、試料を分解し、ポロニウムを分離して測定試料をつくり、シリコン半導体検出器でアルファ線を測定するのがふつうの方法である。床の表面などのポロニウム-210を検出するには2cm以内に検出器を置かねばならない。体内に入っている量を決めるには、排泄物中の放射能を測るバイオアッセイによる以外の方法はない。ガンマ線の測定も考えられるが、放出比率がアルファ線の約10万分の1なので、100万ベクレル以上が存在する汚染現場の調査ででないと役立たないであろう。
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