放射性物質 マンガン-54
マンガン-54の半減期
マンガン-54の半減期は312日
マンガン-54の崩壊方式
マンガン-54は、軌道電子を捕獲して、クロム-54(54Cr)となる。ガンマ線が放出される。
マンガン-54の存在と生成
マンガン-54は人工的につくられる放射能。鉄を中性子で照射すると、鉄-54(54Fe、同位体存在比5.8%)と中性子の反応によって生成する放射化生成物である。大気圏内核兵器実験では、構造材の中にマンガン-54は生成する。大気中に放出され、放射性降下物の中からマンガン-54は検出されている。地上で核兵器が爆発すると、土の中にかなりの量のマンガン-54が生成する。軽水炉の運転では、一次冷却水配管の中でマンガン-54は生成するのと同時に一次冷却水の中にある鉄からもマンガン-54は生成する。一次冷却水中で生成したものが配管の内側に付着し、定期検査の際に剥げ落ちることもある。それが床にばら撒かれ、さらに粉塵として施設外にマンガン-54が放出されることもある。
軽水炉から放出されるマンガン-54
1970年代後半に、敦賀・福島第一・浜岡の各原発の周辺で採取された松葉からマンガン‐54とコバルト-60(60Co、5.27年)が検出され、話題になった。粉塵として放出され、松葉の上に沈積したのである。初期に建設された沸騰水型軽水炉の周辺では日常的に起こっていた。原発作業員の体内にある放射能の測定によってマンガン‐54とコバルト-60が検出されている(森江信「原子炉被曝日記」、技術と人間社、1979年刊、pp.79-81)。定期検査の時などに体内に入ったのであろう。一次冷却水の配管の近くで作業をすると、ガンマ線による被曝を受ける恐れがある。手や足での被曝線量がポケット線量計やフィルムバッジが装着されている胸部の線量の100倍に達する場合もあろう。原子炉の周辺での作業は、非常にきびしい条件下にあると想定できる。
マンガン-54の化学的、生物学的性質
マンガンは2価から7価までの原子価を取る。酸性水溶液の中では2価であることが多く、塩基性になると空気中の酸素の作用で3価または4価に酸化され、加水分解して沈殿しやすい。マンガンは必須元素の一つ。成人の体内の元素の量は12㎎である。体内に撮りこまれた後の挙動は単純ではない。1週間以内に排出される成分と数ヶ月間残る成分がある。体内では、骨と脳に集まりやすい。
マンガン-54の生体に対する影響
ガンマ線とエックス線を放出する放射能で、内部被曝が問題になる。10,000ベクレルの酸化物を吸入した時の実効線量は0.012ミリシーベルト、経口摂取した時は0.0071ミリシーベルトになる。また、1mの距離に100万ベクレルの線源があると、ガンマ線によって1日に0.0030ミリシーベルトの外部被曝を受ける。
マンガン-54の放射能の測定
マンガン-54の測定は試料を適当な容器に入れ、ゲルマニウム半導体検出器でガンマ線を測定するのがふつうの方法である。体内にあるものは、全身カウンターで測定できる。
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