放射性物質 セシウム-134
セシウム-134の半減期
セシウム-134の半減期は、2.06年
セシウム-134の崩壊方式
セシウム-134は、ベータ線を放出してバリウム-134(134Ba)となり(99.9997%)、軌道電子を捕獲してキセノン-134(134xe)にもなる(0.0003%)。セシウム-134から多くのガンマ線が放出される。
セシウム-134の生成と存在
セシウム-134は人工的につくられる放射能。天然では、大気中で宇宙線とキセノンの反応で生成するが、生成量はきわめて少ない。人工的には、セシウム-133(133Cs、同位体存在比100%)が中性子を捕獲すると生成する。核分裂では生成せず、核兵器の爆発によっては生じないと考えてよい。原子炉の運転では、核分裂生成物であるキセノン-133(133xe、5.3日)のベータ崩壊で生じるセシウム-133が中性子を捕獲して生成する。セシウム-134が環境中に存在すれば、原子炉から放出されたか使用済み核燃料から出てきたものである。電気出力100万kWの軽水炉を1年間運転すると、原子炉の種類と運転状況で変るが、5~20京ベクレル((5~20)×1016Bq)が蓄積する。この時に核分裂で生じるセシウム-137(137Cs、30.1年)との放射能強度比(134Cs /137Cs比)は0.4~1.5の範囲に入る。1986年4月26日に起こった旧ソ連のチェルノブイリ原発事故では、4京ベクレル(4.0×1016Bq)が放出された。名古屋で採取した大気試料では、134Cs /137Cs比は0.55であった。この比の値は核燃料が1年以上炉内に入っていたとする推定とは矛盾していない。
セシウム-134の化学的、生物学的性質
セシウムの化学的性質と体内摂取後の挙動は、生物にとって重要な元素であるカリウムと似ている。体内に入ると全身に分布し、約10%はすみやかに排泄され、残りは100日以上滞留する。成人の体内にあるセシウムの量は1.5㎎で、カリウムの140gの約10万分の1である。
セシウム-134の生体に対する影響
セシウム-134を体内に摂取した時のベータ線による内部被曝が問題になり、10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.19ミリシーベルトになる。また、1mの距離に100万ベクレルの小さな線源があると、ガンマ線によって1日に0.0055ミリシーベルトの外部被曝を受ける。
セシウム-134の環境被曝の経過
ラップランド人では、大気からコケなどを経てトナカイに入り、トナカイに入っている放射性セシウムを摂取する過程が経路である。ふつうは、土壌から野菜や穀物を経て人が摂取する経路が重要であり、大気中から葉菜への沈着も問題になる。
土壌の中での挙動は土質によって異なる。粘土質の土壌ではよく吸着され、植物には取り込まれにくい。水圏での挙動は単純ではない。セシウム-134は淡水には溶けにくく、湖底堆積物に含まれることが多い。海水には溶けて、魚などに摂取されやすい。
セシウム-134の再処理工場からの放出
セシウムは水溶液中で揮発性化合物をつくらず、排気中に入らない。排水中の量も低くできるはずであるが、実際はある程度の量が入っている。フランスのラ・アーグ再処理工場からの2003年の排水中への放出量は419億ベクレル(4.19×1010Bq)だという。134Cs /137Cs比は0.055であったが、この減少はセシウム-134の崩壊によっている。
セシウム-134の放射線の測定
セシウム-134の放射線の測定は土壌などの環境試料は適当な容器に入れ、ゲルマニウム半導体検出器でガンマ線を測定するのがふつうの方法で、0.1ベクレルまで検出できる。体内にあるものは、全身カウンターで測定できる。
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