放射性物質 コバルト-60
コバルト-60の半減期
コバルト-60の半減期は、5.27年
コバルト-60の崩壊方式
ベータ線を放出して、ニッケル-60(60Ni)となる。2本のガンマ線が放出される。
コバルト-60の存在と生成
コバルト-60は代表的な人工放射能。コバルトを中性子で照射した時に、コバルト-59(59Co、同位体存在比100%)の中性子捕獲によって生成する。また、ニッケルを速い中性子で照射すると、ニッケル-60(同位体存在比26.1%)から生じる。コバルトの中性子照射で生成しやすく、コバルト1gを原子炉で1ヶ月間照射すると、1,000億ベクレル(1.0×1011Bq)が生じる。大気圏内核兵器実験では構造材中に含まれるコバルトかニッケルから生成して大気中に放出され、放射性降下物の中に入る。地上で核兵器が爆発すると、土などの中でかなりの量のコバルト-60が生成する。旧ソ連のセミパラチンスク実験場で採取した土の中に、20年以上経過後でも、放射化によって生成したユーロピウム‐152(152Eu、13.54年)、ユーロピウム‐154(154Eu、8.69年)とコバルト-60が残っていた。軽水炉の運転では、一次冷却水の配管と冷却水の中に入っているコバルトから生成する。冷却水中で生成したものが配管の内側に付着し、定期検査の際にはげ落ち、施設外に放出されることがある
コバルト-60の化学的、生物学的性質
コバルトは2価と3価の原子価を取る。酸性水溶液中では2価であることが多く、塩基性になると空気中の酸素の作用で3価に酸化され、加水分解して沈殿しやすい。ただし、コバルト-60はアンモニアやある種の有機物などがあると、沈殿せずに溶けていることも多い。コバルト-60は必須元素の一つで、コバルトを含む代表的な体内にある化合物にビタミンB12がある。成人の体内にある元素の量は4.5㎎である。コバルトの体内摂取後の挙動は複雑である。すみやかに排出される成分と数年間残る成分がある。体内で、骨と脳に集まりやすい。
コバルト-60の生体に対する影響
コバルト-60は、内部被曝と外部被曝がともに問題になる。10,000ベクレルの酸化物をを吸入した時の実効線量は0.17ミリシーベルト、経口摂取した時は0.025ミリシーベルトになる。また、1mの距離に100万ベクレルの線源があると、ガンマ線によって1日に0.0088ミリシーベルトの外部被曝を受ける。
コバルト-60、ガンマ線源
コバルト-60は、ガンマ線を放出する線源として広く利用されている。放射線測定器の校正に用いる小線源には3,000ベクレル(3.0×103Bq)程度が入っている。放射線治療に用いる「コバルト針」には1億ベクレル(1.0×108Bq)程度が入れてある。北海道の士幌町のジャガイモの照射に用いる線源では1.1京ベクレル(1.1×1016Bq)を用いている。線源の放射能強度はさまざまである。
コバルト-60の台湾マンションの汚染
台北市のマンションで、壁の中の鉄筋がコバルト-60で汚染されていた。10年以上気付かれず、住民の体調に影響が出てから問題が大きくなった。汚染の原因ははっきりしていないが、コバルト-60線源が鉄に混入した恐れはある。
コバルト-60の放射能の測定
測定は試料を適当な容器に入れて、ゲルマニウム半導体検出器でガンマ線を測定するのがふつうの方法である。体内にあるものは、全身カウンターで測定できる。
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